KOMWORK
第一章 封印されしもの
=====サンクの書=====
その者とらわれし闇、光となる。
沙莉羅
始まりとはなんだろうか。
誰かが生まれた時?事件の発端?それとも世界が生まれた瞬間か。
少なくとも、数ある最初は確かにその言葉から始まった。
「店長。あの本いったい、なんなんですかぁ~~♪」
トゥッタの街の一角。ただ、「汀(みぎわ)」と掲げた看板の店。
そこはその名前の如く、トゥッタに流れ着くあらゆる品物が通り過ぎる店だ。
「本ってどの本のこと? 俊ちゃん」
「アレ。」
店主であるムータンはアルバイトとして雇っている俊が持つはたきの先を追った。
そこには古ぼけた額があり、その額の真中に細い鎖で縛られた本が固定 されていた。 埃がたまっている。
「掃除する度に埃まみれになるんですよ。捨 てたほうがいいんじゃないですかぁ?」
「あのね、俊ちゃん。仮にもアレは当店の家宝なんだよ?」
胸を張ってムータンが応える。だが、俊の目は冷たい。
なぜなら、店内にはその本と同じぐらい古そうでかつ、用途不明な品が所狭しとあるからである。今もムータンは先程見せに届いた「マネキネコ」なるものをいとおしげに撫でている。 一見、ムータンは秀麗な美貌の青年だが、実にファンシーもの好きで可愛 いものに目が無いのである。
「私の何代か前のお客が置いていったものでネ。読んでくれる人間を待っているそうだ」
「へ~」
すこぶる熱の入らない口調で俊が応える。
「私も興味あるのだけどね・・・額から取り外せても、あの鎖が外せないのだよ。おそらく、何かのまじないがかかっているのだろうね」
「読めないんだけどぉ、なんて題なんですかぁ?」
「ん? ああ・・・あれはね、『世界の本』と読むそうだ」
ガタガタッといきなり大きな音が店内に響く。そういえば、と俊が思い出す。『マネキネコ』のほかに、生き物が一匹、店に来たのだ。
「ん~、どうしたのかな~? お腹が空いたのかな~」
いそいそとムータンが檻に近づき、がちゃがちゃとカギを開ける。安易にあけないほうがいいと俊が言おうとしたときだった。 ひゅっ、と信じられないほどの速さで檻からその生き物は飛び出すと、ヒョイッと 額の下にいた俊をジャンプ台にしてくくりつけていた本・・・『世界の本』 を取 るとあっという間に消え去った
。
「・・・あ・・・あ~・・・あああああ!!!」
「逃げちゃったね」
「逃げたじゃないよ、俊ちゃん! 捕まえてきてくれ!」
慌てふためくムータンだが、興味の無い俊はパタパタとやるきなく埃を落としている。
「彼と本を捕獲できたら十万ボーナスに出そう」
「任せてくださいぃぃぃ」
kom
物語はこの平和な街からはじまる。
広がる青い海、心地よい緑の風、白壁の家々、街の名は『トゥッタ』。
ここは、鈍輔と素子の生まれた場所。決して忘れはしない故郷だ。
♪♪♪
ここには灼熱のマグマ
そこには透明なこころ
あそこは蒼黒のだいち
生まれた場所はここ。
♪♪♪
この世界でよく歌われる詩。例にもれず主人公『鈍輔』も口ずさむ。
『ふんふんふ~~ん』原曲とはかなり違う軽快なリズム。
「音痴!」
痛烈な言葉をなげかけたのはヒロイン『素子』さん。
『いいだろ!オリジナルなんだ!オリジナル!!』
「まぁ、いいわ。......なんだか楽しい音だもの」
『なっ!』
二人は顔を見合わせ笑った。
「鈍輔さっきから何を読んでいるの?」
『サンクの書っていう英雄物語かな?郵便受けに入ってた。』
「鈍輔が本を読むなんて珍しいわね。」
NINJIN
火山を抱く国、アザラザ。それを疎ましく思う存在があった。
氷の女王、レイクォーラ。彼女の心もまた氷の様・・。
凍てつく世界を広げようと心の無い兵隊を使う。誰もが彼女を恐れている。
彼女の城には近づけない。もし城に近づいたなら、氷柱(ツララ)があなたを襲うだろう。
そう、中に生きた人の入った人柱(ツララ)が・・。
例えよけたとしても人柱の花が地面に咲くだけ。人柱はただ老いて朽ちるのを待つだけ。
誰も彼女の城には近づくことができない。そしてレイクォーラの恐怖がマグマの国アザラザにも・・・。
人々の期待は英雄「恭介」に集まった。他を寄せつけない守りの鉄壁。
あるときそこは、暗く閉ざされたところでした。
kom
「その本、おもしろい?」
『あぁ!まだまだ序章さ。』
「あはははは、楽しそうね。」
『「英雄」恭介が「オレは放浪者、ひゅ~るる」とか言って火山の国アザラザの依頼を渋ってるんだ』
「まぁ、いい加減な英雄ね。」
『しょうがないさ。恭介は流れ者でね。生まれ故郷はここじゃないんだ』
「でも、困ってるなら助けるべきでしょう」
『...まだ、困ってなんかないよ。表立って展開は進んでいない。
目には見えないところで氷の国のレイクォーレって姫様が他国を侵略しようとしているんだ。
閉ざされた氷の世界を創りたいんだって。恭介はとくに変化は感じられないだろうなぁ。
お気楽だから。何かをやってくれるとは思うけれどね。』
「すごい!.........。」
「何がだい?」 「鈍輔は鈍感だとばかり思っていたけれど、物語の変化は冷静におえるのね!!」
「.........ひどいよ。素子さん。あっ瓦礫の国が!氷の女王が動き始めたようだよ。」









